潮騒
気付けば体が大きくなっていた。


と、いっても、自分の年さえ知らないのだから、いくつになったかなんてわからないのだけれど。


きっと春だったのだと思う。


隔離された、変わらない日々の中で、それは本当に突然の出来事だった。


ドサッ、と上から何かが降ってきた。



「…えっ…」


明かり取りの小窓から落ちてきたのは、小さなスズメ。


少し羽が傷ついていて、きっと怪我をしてそこで休んでいたのだろうけど。



「大丈夫?」


なんて問い掛けたって、もちろん応えてくれるわけではないが。


それでも可哀想に思えてきて、とにかくどうにかしてあげたかった。


自分の服を少し破き、羽にまいてやる。


薬だとかそういったものなんてもちろんなくて、ご飯粒を与えてあげるとか、そんなことしか出来なかったけれど。


でもスズメは、日ごとに回復しているように見えた。



「キミは自由だから良いね。」



だって翼を持って生まれたのだから。



「早く治して、また大空を楽しく飛び回れるようにならなきゃね。」


数日間の、一方的な、でも初めて出来た友達だった。


だけどキミはここにいちゃいけないんだよ。


大丈夫、一緒に閉じ込めたりなんてしないから。

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