潮騒
スズメの傷が完治したその日、話しかけることさえ禁じられていたヨンハが、食事を運んできてくれた。


意を決する。


自分はどんな罰でも受けるから、だからどうか。



「ねぇ、ヨンハ。」


「どうしたの?」


「あのね、すごく大事なお願い事があるんだ。」


「…お願い?」


手の平に乗せた、小さなスズメ。



「この子をお外に放してあげてほしいの。」


「………」


「今はまだ羽を動かすことを怖がってるけど、お外に行ったらきっとまた飛びたいって思うはずだから。」


家族が待ってるはずなんだ。


それにいつまでもここにいたら、さよなら出来なくなっちゃうから。



「ヨンハにしか頼めないの。」


少し考えた彼は、わかったよ、と笑顔を零した。


心優しくて、いつもにこにこしてる、双子の弟のヨンハ。


スズメはヨンハの手に渡る。



「さよなら、元気でね。」


どうかどうか、もう傷ついたりしませんように。


友達でいてくれてありがとう。


短い間だけど、楽しかった。

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