潮騒
小窓から覗く青い空は、今日も淀みなく美しかった。
もしも自分の右目があんな色をしていたら、少しは誇らしく思えていただろうか。
なんて、ありもしないことに思いを馳せる。
羽ばたくための翼が欲しい。
きっとどうにかすればここからだって出ることは可能なのかもしれないけれど、でも外の世界を知らなかったから、そんな勇気なんてものはなかった。
ヨンハと同じ、長く伸びた手足を持って生まれたくせに、ドアを開ける力も、駆ける一歩も出せなかった、あの頃。
いや、他を知らないからこそ、現状のままでも問題なんてこれといってなかったのかもしれないけれど。
「じゃあ次、サッカーしよー!」
「やだよー、うちでゲームが良い!」
土壁越しに、時折聞こえる別世界。
“サッカー”も“ゲーム”もわからなかったけれど、それはとても楽しそうな声だったから。
耳を預けてるだけで、幸せなことのように思えていた。
「それよりさぁ、この古い建物って何ー?」
「ここは蔵だから、入っちゃダメだっておばあちゃんが。」
そうだよ、ダメなんだ。
「ねぇ、良いからあっちでおやつ食べようよ!」
あぁ、ヨンハは今日も元気だね。
怪我してないかな、いつもお友達がいっぱいだな。
なんて、想像ばかりを膨らませては、ひとり笑顔になれていた。
それで良かった。
それだけで良かったのに。
もしも自分の右目があんな色をしていたら、少しは誇らしく思えていただろうか。
なんて、ありもしないことに思いを馳せる。
羽ばたくための翼が欲しい。
きっとどうにかすればここからだって出ることは可能なのかもしれないけれど、でも外の世界を知らなかったから、そんな勇気なんてものはなかった。
ヨンハと同じ、長く伸びた手足を持って生まれたくせに、ドアを開ける力も、駆ける一歩も出せなかった、あの頃。
いや、他を知らないからこそ、現状のままでも問題なんてこれといってなかったのかもしれないけれど。
「じゃあ次、サッカーしよー!」
「やだよー、うちでゲームが良い!」
土壁越しに、時折聞こえる別世界。
“サッカー”も“ゲーム”もわからなかったけれど、それはとても楽しそうな声だったから。
耳を預けてるだけで、幸せなことのように思えていた。
「それよりさぁ、この古い建物って何ー?」
「ここは蔵だから、入っちゃダメだっておばあちゃんが。」
そうだよ、ダメなんだ。
「ねぇ、良いからあっちでおやつ食べようよ!」
あぁ、ヨンハは今日も元気だね。
怪我してないかな、いつもお友達がいっぱいだな。
なんて、想像ばかりを膨らませては、ひとり笑顔になれていた。
それで良かった。
それだけで良かったのに。