潮騒
スズメとさよならをしてから、三度目の朝を迎えたある日のこと。


今日はとても外の世界が騒がしく思えた。


何かあったのだろうか。


なんて思ってはみたものの、いつもそれは関知するところじゃなかったから。


小窓から漏れる春の陽気も手伝い、うたた寝をしてしまった。


と、その時。



「大丈夫、大丈夫。
今日はお父さんもおばあちゃんも、親戚の人が倒れたからって慌てて病院に行ったし、きっと当分帰ってこないから。」


キィッ、と突然に開いた重い扉。


顔を覗かせたのは、ヨンハと、そして同い年くらいの数人だった。


家族と呼ばれるもの以外を見たのは初めてで、驚いたけど、嬉しかった。


友達に、なりたかった。



「ねぇ、ここから出なよ、お兄ちゃん。」


「……え?」


「一度くらい、外の世界に出てみたいでしょ?」


屈託なく、ヨンハは笑って言った。


でも良いのだろうかと少し戸惑っているうちに、今度は手を引かれ、そこで見た世界のまばゆさに、目がくらんでしまいそうだった。


空が大きくて、世界は無数に色が溢れていて。



「なーんてね。」


振り返ると、もうそこにヨンハはいなかった。


いや、正確に言えば、今までヨンハの顔をして笑っていた人が、ひどく冷たく吐き捨てたのだ。



「醜い獣が檻から出ちゃいましたよー、みたいな?」

< 116 / 409 >

この作品をシェア

pagetop