潮騒
戸惑っているうちに、ヨンハは苛立つものを抑えきれなくなったのか、庭先に放置していた虫カゴを持ってきた。


そこにいたのは、あの日に託したはずのスズメ。


まるで自分のように閉じ込められ、鳴き声ばかりを上げていた。



「…何、やって…」


けれど、カゴごと地面に叩き付けたヨンハは、そこにバットを振り落とした。


ガシャン、ガシャン、と響く音。


スズメはカゴと一緒に、残酷なまでにぐちゃぐちゃになった。



「あーあ、獣に助けられた所為でコイツ、殺される運命になっちゃった。」


木製のバットにこびり付いた血の色と、スズメの羽根。


心優しくて、いつもにこにこしてるはずだった、双子の弟のヨンハなのに。


なのに、その本性を知った瞬間だった。


ヨンハはクッと喉を鳴らす。



「お前の食いもんにゴミ入れたの、誰だと思う?」


「………」


「いつも汚れた服しか与えられないのは、どうしてだったと思う?」


全部ボクがやったからさ。


そう言った彼によって、腹部をバットで殴られた。


うっ、とうめくと同時にその場に倒れ、すぐに襲ってきた鈍い痛みに顔を歪める。


上手く呼吸さえも出来ない。



「醜いんだよ、気持ち悪いんだよ、薄汚いんだよ、憎くて堪らないんだよ!」


それでもヨンハは怒鳴り散らしながら、



「何もかも、お前が悪いからだろうが!」

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