潮騒

触れたがり

それはクリスマスも過ぎて、もうすぐ年の瀬を迎えようとしていたある日のこと。


電話口の向こうのレンは、いつもに増してハイテンションで自己中だった。



『悪いんだけどさぁ、俺今年はお前と年越し出来そうにないんだよねぇ。』


「あそ。」


『まぁ、ルカちゃんは俺のことが好きだから寂しいかもだけど、レンくんは人気者だからぁ、ごめんねぇー。』


「………」


『あ、もちろん一緒に過ごすのは女の子なんだけど、名前言っちゃうとルカちゃん嫉妬しちゃいそうだしなぁ。』


何であたしが振られたみたいな言われ方をされなきゃならないのか。


と、いうか、別に約束なんてしてないし、レンが誰とどこで何をしてようと興味なんて欠片もない。


どうでも良くなって、話の途中で電話を切った。



「アホくさー。」


呟いて吐き出した煙が、部屋に溶ける。


レンと美雪が最近メールをしているという話は聞いたし、どうせ年越しだってふたりで過ごすのだろう。


付き合ってるとかではないみたいだが、ノロケられたって困るから。


それに人の恋愛話には初めから首を突っ込まない方が良いってもんだ。



「で、何がアホくせぇって?」


わっ、と思って振り返ると、風呂上がりのマサキが立っていた。


彼は最近たまにこうやって、時間を見つけてはふらっとうちへとやってくる。



「あー、何か友達が年越しは一緒に過ごせそうにないとか言ってて、約束もしてないのに断られちゃったー、みたいな。」


何だそれ、なんてマサキは笑ってから、



「じゃあ俺と一緒にいれば良いじゃん。」

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