潮騒
「ちょっと来いっつの。」
レンはあたしの腕を引き、美雪から聞こえない場所まで来たところで、
「さっきのヤツって客?」
「………」
「まともな男なわけ?
つか、お前がマクラやってるって知ってんの?」
その顔に、いつものおちゃらけなんて見られない。
あたしは掴まれたままだった腕を振り払い、舌打ちを混じらせてから、
「うるさいよ。
いくらいとこだからって、アンタにいちいち全部教えなきゃいけない筋合いなくない?」
「あ?」
「大体アンタこそ美雪とどうしたいのか知らないけど、今もマクラやってんじゃん!」
それは多分、逆ギレのようなものだったのかもしれないけれど。
あたしの言葉にレンは、苛立ち紛れに傍にあったゴミ箱を蹴り飛ばした。
ガシャーン、という音が響く。
「悪いけど、あたしもう行くから。」
きびすを返した時、ひどく心配そうな様子でこちらをうかがっていた美雪と目が合った。
が、彼女は少し迷った末に、レンの元へと駆け寄って行った。
レンとのこんな喧嘩は、思い返す限りでも、多分初めてだったのかもしれないけれど。
歩く度にカップル達とぶつかりそうになる。
それが堪らなく腹立たしかった。
あたしはどうしたいのだろう、どうしたら良かったのだろう。
ただ、フラッシュバックしたみたいにあの事故の光景が、コマ送りのように断片的に、頭の中に浮かび上がる。
次第に呼吸が出来なくなってきて、あたしはその場にうずくまった。
レンはあたしの腕を引き、美雪から聞こえない場所まで来たところで、
「さっきのヤツって客?」
「………」
「まともな男なわけ?
つか、お前がマクラやってるって知ってんの?」
その顔に、いつものおちゃらけなんて見られない。
あたしは掴まれたままだった腕を振り払い、舌打ちを混じらせてから、
「うるさいよ。
いくらいとこだからって、アンタにいちいち全部教えなきゃいけない筋合いなくない?」
「あ?」
「大体アンタこそ美雪とどうしたいのか知らないけど、今もマクラやってんじゃん!」
それは多分、逆ギレのようなものだったのかもしれないけれど。
あたしの言葉にレンは、苛立ち紛れに傍にあったゴミ箱を蹴り飛ばした。
ガシャーン、という音が響く。
「悪いけど、あたしもう行くから。」
きびすを返した時、ひどく心配そうな様子でこちらをうかがっていた美雪と目が合った。
が、彼女は少し迷った末に、レンの元へと駆け寄って行った。
レンとのこんな喧嘩は、思い返す限りでも、多分初めてだったのかもしれないけれど。
歩く度にカップル達とぶつかりそうになる。
それが堪らなく腹立たしかった。
あたしはどうしたいのだろう、どうしたら良かったのだろう。
ただ、フラッシュバックしたみたいにあの事故の光景が、コマ送りのように断片的に、頭の中に浮かび上がる。
次第に呼吸が出来なくなってきて、あたしはその場にうずくまった。