潮騒
繁栄があれば、じきに衰退するということもわかっているし、所詮は永遠なんてものはない。


けど、でも、ショックを隠しきれなかった。


マサキはあたしの所為じゃないと言っていたが、やっぱり当たり前だけど気にしてしまう。


いや、それよりももっと恐ろしかったのは、反面で、あの出会いがなければマサキとは知り合うこともなかったのだと思っている自分自身。


間違っているのかもしれない関係の中で、あたしは北浜社長が言う“手にしたいもの”を見い出そうとしていたのだから。




庇ってくれたお兄ちゃん。

同じ傷を作ってくれたレン。




なのにまた、あたしは誰かの何かを犠牲にしてまで生きようとしているのだろうか。


愛されたいだなんて、おこがましい。


必要のない子供だったと言ったお母さんの台詞が、頭の中をただ反復する。


視界はぐにゃりと歪み始め、それでも上手く涙が流れない自分。


だから今すぐ消えてしまいたかったのに、



「ルカちゃん?」


弾かれたように顔を上げると、目の前にいたのはチェンさんだった。


いつの間に仕事が終わっていたのか、いや、それよりどうやってここまで来たのかすらも思い出せない。


ただあたしは、交差点に佇んでいた。



「どうしたの、気分でも悪い?」


「………」


「まさか自殺を考えてましたー、なんて言わないでしょ。」


チェンさんの間延びした喋り口調は、どこか人を落ち着かせる力があるのかもしれない。


あたしが少し震える息を吐くと、



「よくわかんないけど、危なそうだから送るよ。」

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