潮騒
自嘲気味に問われた台詞。


痛かったのは、心だったのか、掴まれた肩口だったのか。


きっとその両方がひりひりとして、持ち上げた瞳に映るマサキの顔が滲んで見えた。



「何で俺がいるだけじゃダメなんだよ!」


「………」


「そういうこと言わせたくて一緒にいるんじゃねぇだろうが!」


絞り出すような悲痛な叫びと共に、ぎしぎしとベッドが軋む。


彼は散々あたしを揺すった後で、悔しそうに唇を噛み締め、こうべを垂らした。


どうしてそれでもまだ、マサキはあたしを見放さないのだろう。


愛される資格なんかないというのに。



「…ごめん、なさい。」


蔑むようなお母さんの瞳を思い出すと、結局、こんな言葉しか言えなくなる。


彼は少し震える息を吐き、



「なぁ、ルカ。」


それは消え入りそうなほどに弱々しく響く。



「俺はどうやったらお前を傷つけずに済むんだよ。」


漏れた嗚咽はあたしのもの。


マサキはそっと、でも強くあたしの体を包み込んだ。


その想いが苦しすぎて、けれど縋るように腕を伸ばしたのは、あたしの弱さだったのかもしれないけれど。


本当は、ひとりで生きていけるほど強くなんてなかった。


何ひとつ抱え切れなかった自分。


震えた唇が触れて、それは涙の味がした。

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