潮騒
憂いの春霞
あれから2日、美雪は店を欠勤した。
風邪だということになっているが、真相なんて定かじゃない。
彼女に連絡すべきかどうかと迷い、けれど結局あたしは、仕事を終えたその足で、クール・ジョーカーに向かった。
レンは卓につくなりすぐにヘルプのホストを追い払う。
流れた沈黙にいたたまれなくなりそうで、
「どうしようかとは思ったんだけど、やっぱりあたしも気になったから。」
「………」
「美雪、あの後大丈夫だった?」
あたしの問いに、レンは白灰色を混じらせた息を吐き、
「金を稼がなきゃならない理由は、やっぱどうしたって言えない、って。」
彼は悲しそうにそう漏らす。
他の卓の盛り上がりがどこか別世界のように感じてしまうほどに、寂しそうなその瞳。
「それに美雪、俺が色マクラだって知ってるくせに理由なんて聞いてこねぇしさ、何も言わねぇの。」
レンの辛さは、痛いほどにわかる。
グラスの氷がからんと溶けて、あたし達の間にある帳に響いた。
「俺はさぁ、アイツを抱き締めてやることしか出来ねぇの。」
「………」
「どんなに苦しそうに泣いてたって、こんな手じゃ触れねぇもん。」
レンは自らの手の平へと視線を落とし、
「けどさ、抱けねぇのに愛してんだよ。」
風邪だということになっているが、真相なんて定かじゃない。
彼女に連絡すべきかどうかと迷い、けれど結局あたしは、仕事を終えたその足で、クール・ジョーカーに向かった。
レンは卓につくなりすぐにヘルプのホストを追い払う。
流れた沈黙にいたたまれなくなりそうで、
「どうしようかとは思ったんだけど、やっぱりあたしも気になったから。」
「………」
「美雪、あの後大丈夫だった?」
あたしの問いに、レンは白灰色を混じらせた息を吐き、
「金を稼がなきゃならない理由は、やっぱどうしたって言えない、って。」
彼は悲しそうにそう漏らす。
他の卓の盛り上がりがどこか別世界のように感じてしまうほどに、寂しそうなその瞳。
「それに美雪、俺が色マクラだって知ってるくせに理由なんて聞いてこねぇしさ、何も言わねぇの。」
レンの辛さは、痛いほどにわかる。
グラスの氷がからんと溶けて、あたし達の間にある帳に響いた。
「俺はさぁ、アイツを抱き締めてやることしか出来ねぇの。」
「………」
「どんなに苦しそうに泣いてたって、こんな手じゃ触れねぇもん。」
レンは自らの手の平へと視線を落とし、
「けどさ、抱けねぇのに愛してんだよ。」