潮騒
レンが言ったことは正しいし、あたしは自分自身を誤魔化し続けなければ生きられないような女だ。


だから誰にも愛される資格なんてない。


客に抱かれ、金を手にすることだけが、今のあたしがしなきゃならないことなのだから。


オヤジの荒い息使いに合わせて軋む、ベッドのスプリング。



「ほら、もっとヨガれよ!」


柔肌を鷲掴まれ、苦痛に顔が歪んでいく。


それでもあたしは嬌声を上げた。


明日はランチに行きたいな、次の髪色はどうしようか、なんて、無理やり思考を塗り重ねながら。


じゃなきゃもう、壊れてしまいそうだった。


あたし自身も、心でさえも。



「毎回いくらの酒入れてやってると思ってんだよ、こっちは大金積んでだぞ!」


醜いだけの欲望が渦をなす。


こんな時、いつもふと脳裏をよぎるマサキの顔に、ただ胸が痛んだ。


レンはもうマクラなんてしたくはないと言っていたけれど。


それでもあたしは、やっぱり抜けることは出来ないのだと思う。


だって自分自身を汚すことでしか、償いの方法なんて知らないから。



「お前の代わりなんかいくらでもいるんだってこと、忘れんなよ。」


そう吐き捨てながら、男はあたしの体を舐め回した。


毒牙に染まっていく。


綺麗な部分なんて、もうとっくに失ってしまっているね。

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