潮騒
「お前と一緒に暮らしたら、それはそれで楽しいのかもな。」


どういうつもりで言っているのかはわからない。


けど、でも、安易な言葉なんて返せなかった。


マクラ嬢と、情報屋。


マサキはやっぱり物珍しそうな顔で、ネギとニラを持ち上げて見比べている。



「ほら、行くよ。」


その背に声を掛けた。


あたし達が互いにこのままである限り、間違っても一緒に暮らすなんてことはないだろうから。


どんなに寄り添っていたところで、所詮は恋人なんかになれはしない。


家族になるということは、つまりは同じものを抱えるということらしいけれど。



「なぁ、それより何作ってくれんの?」


「肉じゃがとか、おひたしとかね。」


「へぇ、すげぇな。」


「だから別に普通だってば。」


そんな会話をしながら買い物を終えて店を出たところで、マサキの携帯が鳴った。



「わかった。
じゃあ俺も確認するから、一旦そっち戻るわ。」


電話を切った彼は、ちょっと事務所に寄るから、と言って車を走らせる。


春に近付いた気候は随分と穏やかになったけれど、でも相変わらず天気予報なんてアテにはならない。


すっかり薄暗くなった空に、だけどもやっぱり星は見られなかった。

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