潮騒
疑惑と嘆き
あれから3日ほどが過ぎた夜のこと、突然に、彼は店にやってきた。
卓に行くと、オッドアイの瞳が困ったように緩められる。
「…チェン、さん…」
指名され、心底驚いてしまったが。
「ちょっとルカちゃんと話したくてさ。」
けれど、さすがに先日のことがあったばかりだ。
あたしが曖昧な顔しか出来ずにいると、
「この前、ごめんね。」
「……え?」
「俺も機嫌悪かったとはいえ、さすがにちゃんと謝っとくべきだと思ったから。」
だから、ごめん。
そう付け加えたチェンさんは、やっぱり困ったように笑っていた。
彼は酒を流し、物思いに宙を仰ぐ。
「まぁ、マサキがスミレさんのこと良く思ってないのはわかってるけどさ。」
だって、と言葉を切ったチェンさんは、
「だってスミレさんは、石橋組組長さんの情婦だから。」
石橋組組長の、情婦。
決して手を出してはならない危ない相手だ。
この辺りの組ではないとはいえ、知られればチェンさんはどうなることか。
あの女だけはダメなのだと言っていたマサキの言葉の意味が、今更になってわかった。
「でもさ、好きになっちゃったもんはしょうがないじゃん?」
卓に行くと、オッドアイの瞳が困ったように緩められる。
「…チェン、さん…」
指名され、心底驚いてしまったが。
「ちょっとルカちゃんと話したくてさ。」
けれど、さすがに先日のことがあったばかりだ。
あたしが曖昧な顔しか出来ずにいると、
「この前、ごめんね。」
「……え?」
「俺も機嫌悪かったとはいえ、さすがにちゃんと謝っとくべきだと思ったから。」
だから、ごめん。
そう付け加えたチェンさんは、やっぱり困ったように笑っていた。
彼は酒を流し、物思いに宙を仰ぐ。
「まぁ、マサキがスミレさんのこと良く思ってないのはわかってるけどさ。」
だって、と言葉を切ったチェンさんは、
「だってスミレさんは、石橋組組長さんの情婦だから。」
石橋組組長の、情婦。
決して手を出してはならない危ない相手だ。
この辺りの組ではないとはいえ、知られればチェンさんはどうなることか。
あの女だけはダメなのだと言っていたマサキの言葉の意味が、今更になってわかった。
「でもさ、好きになっちゃったもんはしょうがないじゃん?」