潮騒
お母さんとの金の受け渡しは、すべてが銀行振り込みになった。


だから今じゃ連絡なんて、互いに事務的なメールを送る程度のものだ。


あたし達の間にある血の繋がりがいかに希薄なものなのか、改めて思い知らされた気がする。


金がなければ娘だとさえ思ってもらえないのかもしれない。



「おいこら、飲んだくれが。」


今日もクール・ジョーカーに来ていたあたしの手に持つグラスが取り上げられる。


レンは呆れた様子で肩をすくめた。



「家で飲めよ、家で。」


「うるさいわねぇ、ここは酒を飲む場所でしょ。」


悪態をついたあたしに彼は、



「わかったから絡むなよなぁ。」


と、心底面倒くさそうな顔をした。


横ではヘルプの新人がうな垂れている。



「ねぇ、廉人。」


廉人って言うなっつーの、なんてやれやれと腰を下ろした彼に、あたしは頭に浮かんだそのままの疑問を投げ掛けてみた。



「愛情と友情、選ばなきゃならなくなった時、アンタだったらどっちを取る?」


それは先日、あたし自身がチェンさんに問われたこと。


レンは一瞬驚いたような顔をしながらも、



「そんなの状況によるだろ。」


そう前置きをした上で、



「俺ならもしかしたら、どっちも選ばないかもしれねぇな。」

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