潮騒
そうだね、レン。


あたし達は、必死で生きて、金を稼がなくてはならないんだから。


ただ、それでも少しばかり、彼の生き方が心配になる。



「無理しないでよね。」


「それ、ルカにだけは言われたくねぇけど。」


顔を見合わせて、ちょっとだけ笑った。


笑ったら、レンはさっさと席を立ち、またな、と他の卓に行ってしまう。


いつの間にその背中は、こんなにも偽物の城が似合うようになってしまったのか。


手首の傷へと視線を落とした時、あたしの隣でうずくまっていたヘルプの男がくぐもった声を上げた。



「ちょっとアンタもさぁ、もっとしっかりしなさいよねぇ。」


仕方がなくも揺すってやると、彼はへらへらと酔っ払った顔で、



「ルカさーん。」


と、どさくさ紛れに抱き付いてきた。


仮にもナンバーワンの客に対してこんな態度だなんて、信じられない。


呆れた顔で振り払おうとした時、



「どうせ転落するような男なんかやめて、俺に指名変えしてくださよー。」


耳元に潜まされた言葉にひどく驚いた。


そして、それと同時に激しい怒りが沸き起こる。


あたしは無言のまま、手元にあったバッグを彼に叩き付け、席を立った。



「…ちょっ…」


「あんたみたいなヤツと喋ってると、気分悪くなるのよね。」

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