潮騒
足早に店を出て、夜風に吹かれた。


抑えきれない悔しさの中で、とにかく一服しようとしていた時、



「おい、ルカ!」


声に弾かれて振り向くと、少し息を切らしたレンが追ってきていた。



「どうしたんだよ、急に!」


「………」


「つーか、アイツ何か変なことでも言った?」


だからって、話せるわけがないじゃないか。


曖昧にだけ笑うと、彼はため息混じりに肩をすくめる。



「とにかく今は俺も忙しいし戻らなきゃだから、今度ルカんち行くわ。」


腕時計を一瞥したレンに向け、



「別に来なくて良いって。」


「いや、でもやっぱちゃんとゆっくり話したいから。」


「ちょっと、恋人じゃないんだからさぁ。」


「………」


「それに、アンタはあたしのことより、美雪のこと一番に考えてあげなさいよね。」


すると彼は困ったような顔をした。


だからあたしは手をひらひらとさせ、じゃあねー、ときびすを返す。


最愛のいとこ――あたしにとってレンはもう、それ以上にお兄ちゃんの代わりのようだと思う。


あたしがレンを裏切ることはない。

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