潮騒
きっとマサキだって本心では、チェンさんの恋愛を否定なんてしたくはないのだと思う。


けれど、相手が相手だ。



「まぁ、今は放っとくしかねぇよ。」


煙草を消し、彼はテーブルに並べ終えたパスタにフォークを絡める。


あたしも食べようとした時、邪魔するように携帯が鳴った。


受信したメールは、レンからのもの。




【今から行って良い?】




なんてタイミングが悪いのだろう。


今は忙しいから、とだけ送ると、すぐにまた返信が入った。




【話したいことがあるんだけど。】




一体どうしたというのか。


先日のことなら気にしてないし、第一、レンが話したいことなんて大抵はくだらないことばかりだ。


それより今は、あたしにとってはパスタを食べることの方がずっと重要だから。


もう一度無理だという旨だけを返し、面倒になってあたしは、携帯をサイレントモードにして閉じた。



「お前、メール打つの早ぇよな。」


向かいでマサキが笑う。


こんなの慣れだよ、とあたしも笑った。


他愛もないことを言いながら食事をしている間に、レンからのメールのことなどすっかり忘れてしまっていた。


だって何でもないことなのだと思っていたから。

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