潮騒
苦しくて堪らなかった。


一緒にいたいと思う気持ちはあたしだって同じだ。


けれど、もしも知られたならば、遅かれ早かれ傷つけ合う。



「こんな半端なままの関係なんて、もう無理だろ!」


それ以上は言葉にしないで。


聞いてしまえば答えを出さなきゃならなくなるじゃない。


なのに、彼は、



「金が必要ならどうにかしてやるから!
だからマクラだってやめて、俺といれば良いだろうが!」


あたしを揺する手が熱い。


いつだってマサキはこうやって、あたしの心の内を溶かしていく。



「お前が例え何を背負ってたって、俺はちゃんと受け入れてやるから!」


「………」


「だからもう、逃げんじゃねぇよ!」


涙が溢れて止まらなかった。


嬉しくて、そして堪らなく辛くなる。


だからこそ、首を縦に振ることなんて出来なかった。


テーブルの上に置きっ放しにしていたお兄ちゃんが映る数々の写真が、視界の隅で静かに存在感を示している。


あたしは一体何を選べば良いのか。



「なぁ、ルカ。」


不意に彼は、手繰り寄せるようにあたしの名前を呟いた。



「お前の言葉で本当の気持ち、聞かせてくれよ。」

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