潮騒
「…あたし、は…」


その刹那、鳴り響いたチャイムの音。


弾かれたように体を離すと、今度はそれが、ドンドンドン、とドアを叩く音に変わる。


ひどく嫌な予感がした。


だから玄関まで行き、恐る恐る扉を開けてみると、



「…レン?」


表情なく、彼はそこに佇んでいた。



「ちょっと良い?」


「…えっ…」


「上がるから。」


レンは無理やりドアを開ける。


さすがに今はマズイと思ったものの、力で制止できるはずもない。



「待ってよ、何なの?!
話があるなら外で聞くし、勝手なことしないでよ!」


けれど彼は、玄関に並んでいた男物の靴を一瞥し、



「アイツもいるんならちょうど良い。」


そう吐き捨て、あたしを振り切ってズカズカと中へと押し入る。


ひどく驚いた顔をしているマサキとは対照的に、レンの瞳には怒りが満ちていた。



「お前、誰?」


「俺はルカのいとこってやつ。」


「…いとこ?」


「まぁ、一応、はじめまして、って言っとくべきかな。」


まるで挑発するようなレンの台詞。


いきなり現れて、おまけに何を考えているのかわからない。

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