潮騒
言葉にされてしまった事実。


レンは拳を握り締め、あたしはその場に膝から崩れ落ちる。


マサキはただ茫然と立ちすくんだままに、



「…ユズルって、まさか…」


「そうだよ、ルカはアンタの親父が轢き殺した“9歳の少年”の妹なんだよ!」


レンはマサキの胸ぐらを掴み上げた。


けれどもあたしは立ち上がることさえも出来ず、耳を塞ぐ。



「あの時に生き残った所為で母親から罵られて、父親にまで見捨てられて、死のうとして、でも結局は金のために体売ることでしか生きられなくて!」


「………」


「そんなの全部、てめぇの親父が悪ぃんだろうが!」


レンの怒声に、マサキはふらふらと足を引いた。


そして彼は顔を覆うけれど、



「カエルの子はカエルって言うけど、所詮、人殺しの子は人殺しなんだよ!」


「………」


「てめぇが例えどんな善人だろうと、ルカがユズルくんを殺したヤツの息子と一緒にいることだけは、俺が許さねぇ!」


声を荒げながらレンは、さらに吐き捨てる。



「前にどっかで見たことあるとは思ってたけど、まさかと思って昔の新聞記事、調べてみて正解だったよ。
てめぇの目はアイツにそっくりじゃねぇか!」


ずっと、話したいことがある、と言っていたのは、やはりこのことだったのだろう。


耳を塞いでたって何の意味もない。


涙が溢れて止まらなかった。

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