潮騒

悲痛な吐息

マサキからの連絡がなくなり、もう一ヶ月近くが過ぎただろうか。


相変わらずお兄ちゃんの夢は見るし、手首の古傷は痛みばかりを放っている。


レンから定期的に入ってくるメールにさえも、ほとんど返信なんてしない。


そして、



「ルカさん、飲みすぎですってば!」


美雪は事情も知らないくせに、あたしを気遣っては、どこへ行くにもひっついてくる。


今日も手に持つグラスが取り上げられた。



「ホント、体壊しますよ?」


ため息混じりの彼女の台詞。


いっそあたしが消えてなくなれば、お兄ちゃんが生き返ったりはしないだろうか、なんて、酒に蝕まれた思考はもう飽和状態だ。


クラブやホスト、男遊びでさえも、虚しさなんてちっとも拭えなかった。


ろくでもない自分にはいい加減、辟易するよ。



「もう、レン呼びますからね!」


「ちょっと、別にアイツはあたしの保護者じゃないんだから。」


「けどルカさん、あたしの言うことなんて全然聞いてくれないじゃないですか!」


レンに会うと、必ずこの醜態を見ては怒られる。


あたしが子供みたいに頬を膨らませると、美雪は携帯を取り出そうとしていた手を止め、



「少しは周りの人のことも考えてくださいよ。」


「………」


「それに、五体満足で毎日を過ごせることがどれだけすごいのか、ルカさんわかってるんですか?」

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