潮騒
それでもマサキは、ちょっとコンビニ寄ってやるから待ってろよ、と言い、脇にあった店に入った。


車内で少し待っていると、彼が買ってきたものは、ミネラルウォーターや栄養ドリンク、果てはお菓子やサンドイッチまでも。



「どうしてこんなことしてくれるの?」


「だってお前が無理してるように見えるから。」


深夜3時、人影のないコンビニの明かりに照らされたマサキの横顔は、少しばかり悲しそうなものだった。


無理をせずに生きたことのないあたし自身が露呈されてしまいそうだ。



「着いたら起こしてやるから、それまで寝てろよ。」


「…別に、あたしは…」


「やっぱすげぇ強情だなぁ、お前は。」


困ったような笑顔だった。


いたたまれなくなってしまい、あたしは煙草を取り出すようにして視線を落とす。


手が震えた。


いつも優しかったお兄ちゃんの顔がフラッシュバックし、けれど次に頭に浮かぶのは、あの凄惨な事故現場。


蛇行運転で向かってくる車に驚き、足がすくんで動けなかったあたしは、ドンッ、と突き飛ばされた。


代わりに血に染まっていたお兄ちゃん。



「…やだっ、やめっ…」


「おい、ルカ?」


弾かれたように顔を向けると、マサキがあたしを覗き込んでいる。


上手く息が出来なかった。



「ごめん、何でもないの。」

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