潮騒
愛と、罪悪感。


それが入り乱れながら、あたし達を縛り続ける。


あたしがお兄ちゃんの妹じゃなければ、マサキがアイツの息子じゃなければ、こんな想いはしなくて済んだのに。



「なぁ、やっぱ俺は間違ってんのかな。」


「………」


「こんな関係じゃ、お前のこと苦しめるだけなのに。」


マサキの吐き出す痛みを聞きながら、あたしはその場に膝から崩れ落ちた。


冷たいフローリングに涙の痕が滲む。



「…許してほしいなんて言えねぇけど、それでも俺はっ…」


その体を引き寄せたのは、あたしの方だったのかもしれない。


唇が触れて、込み上げてくる想いが止められない。


マサキは一瞬ためらい、でも何かを堪えるような顔を振り払う。


圧し掛かる重み。


あたしは血迷っているだけなのだろうか、この苦しみから一時でも逃れたいだけなのだろうか。


ただ、それでも、マサキの熱い体温に触れて、悲しいけれど、生きているのだと知った。


生きているからこそ、受け入れなくてはならないのかもしれない。


受け入れて、現実を見なければならないのだ。


例えこれがレンを裏切る行為なのだとしても、あたしはマサキを求めていた。



「ごめんな。」


彼はうわ言のようにそればかり繰り返す。


世界から取り残された空っぽの部屋で、あたしはマサキの腕に抱かれていた。


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