潮騒
彼はサングラスを外し、ひどく驚いた様子であたし達ふたりを見た。


カシャン、と、レンの手からそれが、地面に落ちる。



「…何で、お前らがっ…」


ヤバイ、と思った瞬間だった。


レンがマサキに掴みか掛かろうと拳を握るので、あたしはその間に割って入る。



「待ってよ、話を聞いて!」


折を見て、ちゃんと言おうと思っていたのに。


なのに先にこの状況で会ってしまっては、頭に血がのぼった彼を止めることは容易ではない。


立ちはだかったあたしを見たレンは、



「どういうことだよ、何でまだ一緒にいるんだよ!」


「…ちょっ…」


「お前、何考えてんだよ!
そいつに脅されてんだったら…」


「違うってば!」


その腕を振り払うと、彼はやっぱり目を見開き、



「だってその男は、氷室正孝の息子じゃねぇか!」


悲痛な叫びが墓地にこだました。


ざわりと木々は揺れながら、春の嵐を巻き起こす。



「まさかお前ら、それでも一緒にいるつもりだとか言わねぇだろ?」

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