潮騒
「チェンに会ったんだって?」


マサキの開口一番はそれだった。



「まぁ、偶然会って、ちょっと話したって程度だよ。」


さすがに口止めされてしまった手前、言うのははばかられた。


だから適当にだけ誤魔化したのに、



「アイツ、何か言ってた?」


「え?」


「いや、俺の勘違いってだけかもしれねぇけど。」


考え込むような仕草でマサキは、



「チェンのヤツ、最近何かおかしいんだよ。」


「………」


「動きが怪しいっつーか、馬鹿が浅知恵なんか働かせて余計なことしてなきゃ良いんだけど。」


スミレさんって人と一緒に逃げるかもしれない。


と、喉元まで出かかった言葉は、やっぱりすんでで止めておいた。


あたしから話すべきじゃないだろうし、チェンさんにだって考えていることくらいはあるはずだから。



「マサキって時々チェンさんの保護者みたいだよね。」


笑ってやると、彼は渋々会話を終わらせた。



「それより今日はどうしたの?」


「どうもしねぇけど、ちょっと時間出来たから。」


何だか恋人みたいな感じがおかしい。


あたしはまた笑った。

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