潮騒
それから一緒に夜を過ごし、ふたりで眠って、起きた頃には午後を迎えていた。


折角の休みなのに、また無駄に時間が過ぎてしまった気がするが。


マサキといるといつもこうで、ちょっと勿体ないと思う。


そして夕方になり、今日は唐揚げでもしようかと冷蔵庫を漁っていた時、



「いったぁ!」


突然に、左手首に激痛が走った。


持とうとしていた鶏肉が床に落ちる。



「何だよ、どっかにぶつけたか?」


雑誌を読んでいたマサキは怪訝そうに顔だけで振り返るが、



「じゃなくてさぁ、この感覚って…」


この感覚って確か、手首を切ったあの日の痛みに似ている気がするの。


すっかり傷痕になっている場所が、まるで今しがた傷つけたばかりのようにドクドクと脈を打つ。


今までにないような痛みだった。


これは一体何なんだろう。


左の手首をただ呆然と見つめているあたしにマサキは、



「おい、ルカ!」


けれど、意志とは別に体が震える。


それでもあたしは精一杯で笑顔を作り、



「そういえば昨日ちょっと手首ひねったし、それが原因かも。」

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