潮騒
その左手首には、痛々しいまでに包帯が巻かれていた。


まるで昔のあたしのよう。



「何考えてんのよ!
連絡もらった時、あたしがどんな気持ちだったと思うの?!」


声を荒げるあたしに対し、レンは顔を俯かせ、



「お前には関係ねぇことだ。」


「…関係ない?」


「だから出ていけよ!」


それは振り絞るような一言だった。


彼は悔しさを噛み締めるように拳を作り、



「…何で俺まだ生きてんだよっ…」


「………」


「…こんなのもう、耐えられねぇよ…」


怒りさえ消えてしまうほどに、レンは弱々しくも言葉を並べている。


死んだ方がマシだと思うような出来事。



「ねぇ、一体何があったの?」


あたしの問いに、彼はゆっくりと悲壮感の漂う顔を上げ、



「俺もう、ルカとあの男のこと責める資格ねぇよ。」


「………」


「俺も同じだった。」


「…え?」


「俺が愛してたのは、宮城の妹だったんだ。」

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