潮騒
そして再び振り向いた彼女は、



「ルカさんも、本当にすいませんでした。」


「別に良いよ、もう。
アンタが最初は企みを持って近付いてきてたとしても、あたしはアンタの言葉のおかげで救われたんだから。」


そう、美雪のすべてが嘘というわけじゃない。


伊達や酔狂だけで今まで一緒に過ごしてきたわけではないし、その時間は確かに本物なのだ。



「本当のこと話してくれてありがとね、美雪。」


「…ルカ、さん…」


美雪が涙ぐむのを見届けてから、あたしはひとり、静かに病室を後にした。


他人が介入することじゃない。


あとはふたりが話し合い、今後のことを決めれば良い。


きっと簡単なことではないけれど、でも願わくば、もう悲しみの連鎖なんてなくなれば良いのに。



「頑張ってね、レン。」


ドアに向かってあたしは呟いた。


病院を出て、携帯の電源を入れるとすぐに受信されたメール。


またお金を催促するお母さんからのものだった。


最近は本当に頻度が増えたと思うし、体調不良で通院しているというのも怪しいものだ。


どうしても今日はそんな気分にはなれず、あたしは初めてお母さんからのメールを無視した。


決してお金がないわけじゃない。


けど、こんなのは真っ当な親子関係じゃない。


いつもそれを改善させることから逃げていたけれど、でももう、あたしもちゃんと向き合うべきなのだ。

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