潮騒
レンは煙草を咥え、息を吐く。



「正気俺はさ、ぶっちゃけるとまだルカの男のこと完全には許せねぇの。」


「…うん。」


「けど、今回のことで身に沁みたよ。」


「………」


「過去ばかり見て恨むのは簡単だけど、それじゃ人の目は曇ってしまうし、理解しようとしなきゃ何も始まらないんじゃないか、って。」


そう言ってから、彼はあたしを見る。



「それにやっぱ俺らはいとこってよりはもう兄妹みたいな感じだしさ、否定するより応援してやるべきなんじゃねぇかなぁ、みたいな?」


力が抜けたように、あたしは泣きそうな顔で頷いた。


レンの言葉ひとつにどれほど救われるだろう。



「あたしもね、レンのこと見習って、今度お母さんとちゃんと話してみようと思って。」


「…おばさんと?」


「やっぱさ、あたしももうマクラなんてやりたくないから。」


そっか、と噛み締めたように言った彼は、



「何かが変わること、俺も祈ってるから。」


「ありがとね。」


あたし達は作った拳をコツンとぶつけ合った。


そして顔を見合わせ、笑ってしまう。


少しずつ、少しずつだけど、すべてが良い方向に向かっているのだと思っていた。

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