潮騒
永遠の離別
そして訪れた、レンの退店の日。
いつも混み合っているクール・ジョーカーも、今日の賑わいは異常だと思えるくらいに集まった女の数。
みんながレンの退店を惜しみ、中には涙を流す客までも。
マクラをして築き上げたものだとしても、決してそのすべてが嘘というわけではない。
レンの持って生まれた隠しきれない人柄が、今日の日に繋がったのだとあたしは思う。
「やっぱり“クール・ジョーカーのレン”はすごいですね。」
美雪は横で感嘆したように言った。
ここに来たのは初めてらしいけれど、でも最後くらいはホストとしての彼の姿を目に焼き付けておきたかったから、と話していた。
どの女がマクラの客かなんてもう関係ない。
あたし達は一番隅の卓で、レンの門出に僅かばかりの彩りを添えた。
「レン、この前いきなり介護系の仕事の資料を取り寄せててさ。」
「そうなんですよ、そっちに興味あるってあたしにも言ってましたもん。」
「でも何かまだちょっと現実っぽく思えないけどね。」
ふたりでひそひそと笑い合う。
レンは色々な卓をくるくると回りながら、酒を飲んでは、礼を言って頭を下げていた。
少しだけ申し訳なさそうな、でも誇らしげな顔で。
「レン、こんなにも好かれてたんですもんね。」
「嫉妬でもしてる?」
「じゃなくて、ちょっとそういう人柄に憧れるっていうか。」
あたしはアンタに憧れてるけどね、とは言わなかったけれど。
でも、美雪にとっても今日は門出。
いつも混み合っているクール・ジョーカーも、今日の賑わいは異常だと思えるくらいに集まった女の数。
みんながレンの退店を惜しみ、中には涙を流す客までも。
マクラをして築き上げたものだとしても、決してそのすべてが嘘というわけではない。
レンの持って生まれた隠しきれない人柄が、今日の日に繋がったのだとあたしは思う。
「やっぱり“クール・ジョーカーのレン”はすごいですね。」
美雪は横で感嘆したように言った。
ここに来たのは初めてらしいけれど、でも最後くらいはホストとしての彼の姿を目に焼き付けておきたかったから、と話していた。
どの女がマクラの客かなんてもう関係ない。
あたし達は一番隅の卓で、レンの門出に僅かばかりの彩りを添えた。
「レン、この前いきなり介護系の仕事の資料を取り寄せててさ。」
「そうなんですよ、そっちに興味あるってあたしにも言ってましたもん。」
「でも何かまだちょっと現実っぽく思えないけどね。」
ふたりでひそひそと笑い合う。
レンは色々な卓をくるくると回りながら、酒を飲んでは、礼を言って頭を下げていた。
少しだけ申し訳なさそうな、でも誇らしげな顔で。
「レン、こんなにも好かれてたんですもんね。」
「嫉妬でもしてる?」
「じゃなくて、ちょっとそういう人柄に憧れるっていうか。」
あたしはアンタに憧れてるけどね、とは言わなかったけれど。
でも、美雪にとっても今日は門出。