潮騒
翌日、昼過ぎに起きてきたレンの顔は、ちょっとヤバイものだった。


見るからに二日酔いとでも言えば良いか、とにかく昨日の輝きを放っていたあのホストと同一人物だとは思い難い。



「すんげぇ頭痛ぇー。」


「まぁ、しょうがないんじゃないの?」


「うわー、他人事だと思いやがってー。」


レンはこめかみを押さえながら、差し出してやった水を流し込んだ。


寝癖が笑える。



「それより起きたんならさっさと自分の家に帰りなさいよね。」


「お前は鬼か!」


「あたしはアンタの所為でソファーで寝る羽目になったんだから、文句言われる筋合いないっつーの。」


それでもぎゃあぎゃあと騒げるレンは、すごいと思う。


あたしはうるさいと思いながらも、無視をして出勤の準備に取り掛かった。


馬鹿に構ってちゃ、遅れてしまう。



「愛しのいとこが死にそうなのに、ホント薄情な女だよなぁ。」


と、いう言葉には呆れ返るが。


肩をすくめていると、鳴ったのはあたしの携帯。



「あ、大家さんからだ。」


大家さん――お母さんが暮らすアパートの管理人で、あたしにまで電話が掛かってくるというのは、家賃を滞納している時くらいだ。


嫌な相手からだと思いながらも通話ボタンを押した瞬間、



『ルカちゃん、落ち着いて聞いてくれ。』


神妙な様子で彼は言った。


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