潮騒
レンが大家さんに折り返しの電話を入れ、詳しいことを聞いたのだと思う。


連れられた場所は地元の葬儀場だった。


すでにそこにはお母さんの弟――叔父さんがいて、粗方の準備をしてくれていた。



「ルカちゃん、久しぶりだね。
僕も数時間前に聞いて驚いたんだけど、こんな場所で再会なんてしたくなかったな。」


「………」


「諸々の手配はこっちでしておくから、キミはまず気をしっかり持つんだ。」


何の因果なのか、叔父さんがこの葬儀社に勤めていたことは知っていたけれど。


だから任せておけば良いということはわかっていても、上手く頭が働かない。


案内された場所に、棺はあった。



「姉さんの顔、見てやってくれないか?」


そこに眠る彼女からはもう、すでに肌の色は消えかけていた。


死に化粧が施され、二度と目を開けることはない。


これがあの、お母さん?



「姉さんから口止めされていたし、キミとの関係も知っていたとはいえ、やっぱりもう少し早くに連絡を入れるべきだったね。」


「………」


「せめてキミにも姉さんの最期に立ち合わせてやるべきだったんだ。」


「………」


「姉さんは今、愛息子であるユズルくんと会えたのかな。」


叔父さんの言葉さえもただ耳を通り過ぎた。


最期にあたしの顔を見ることさえも彼女は拒んでいたのだろうか。


今はもう、何もわからない。


お母さんは死んだんだ。

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