潮騒
レンは、近くの公園で時間を潰していると言っていたので、そちらへときびすを返した。


そこのだだっ広い駐車場に、見慣れた車を見つける。


すっかり待たせてしまったなと、急いで駆け寄ろうとした時、



「良いから、行かせてよ!」


「行くも何も、とにかく落ち着け!」


男女の言い争う声が聞こえた。


何事なのかと辺りをうかがったその刹那、目に映った光景にぎょっとした。


レンと、そしてカオルちゃんの姿。


あたしに気付いてはっとした顔のレンとは対照的に、カオルちゃんはこちらへとつかつかと歩み寄ってきた。



「てっきり廉人くんのカノジョだと思ってたけど、アンタがあたしの腹違いの姉だったなんてね。」


喧嘩腰で、彼女はあたしを睨み付ける。



「お父さん、いきなりアンタのこと家族の一員に迎えるとか言い出してさ。」


「………」


「何を言って泣き付いたのか知らないけど、迷惑なのよ!」


やめろってば、とレンは制する。


あたしは馬鹿馬鹿しくなって肩をすくめた。


言われのないことで、しかも初めてまともに話したに等しい腹違いの妹に、どうしてここまで罵られなきゃならないのか。



「言葉遣いひとつも知らないくせに、いきなり人の前に現れて捲し立てて、迷惑なのはどっちか考えなさい。」


「はぁ?」


「それともやっぱり不倫女の娘なんて、そのレベルなのかしら。」

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