潮騒
「ちゃんと続ける気があるのか、それともこのまま辞めるのか。」


「………」


「あと、系列に移ってイチからやり直すって方法もあるけど。」


系列店――風俗だった。


ファンタジーからそちらに流れたという話だって聞かないわけではないけれど、でもまさかあたしがそれを勧められるなんて。


ほとほと地に落とされたものだと思う。



「まぁ、今月中にはちゃんとした答えを出してね。」


そう言って、オーナーと店長は部屋から出た。


横で今まで黙って聞いていた黒服は、こちらを一瞥してから鼻で笑う。



「ルカさん、ダメージ大きいね。」


彼は顔を近づけながら、



「泣きっ面に蜂っていうか、弱り目に祟り目っていうか、可哀想に。」


心にもないくせに。


今まであたしのおかげで稼げて、その上ホール長にまでなれたくせに、随分と簡単に手の平を返してくれるものだ。



「でもさ、俺はまだルカさんなら稼げると思ってるんだけど。」


「………」


「ねぇ、俺からオーナーに直訴してあげようか?」


だから自分と寝ろ、とでも言いたいのだろう。


今、コイツに縋ればあたしはここに残れるし、付け回し次第では、まだ返り咲くことだって可能かもしれない。


けど、でも、



「アンタに頼るほどあたしは困ってなんてないから。」

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