潮騒
お父さんはまだ、あたしと暮らすという考えを捨ててはくれない。


新しい奥さんと、カオルちゃんがいるくせに。


今更になって父親面なんてされたところで、あたしの心が動くことはないというのに。



「つか、ルカには言うべきじゃねぇのかもしれねぇけどさ。」


レンは出したコーヒーに口をつけながら、



「カオルちゃんも今、荒れてんだよね。」


「……え?」


「まぁ、反抗期ってのもあるんだろうけど、家庭もゴタゴタしてるみたいで、よく喧嘩して家を飛び出してるみたいなんだよ。」


「………」


「あ、別にルカの所為とかいう意味じゃなくて。」


焦ったようにレンはそう付け加えるけれど、でも気分が良くなる話ではない。


向こうの家庭がどうなろうと知ったことではないけれど、面倒なことになる予感は拭えない。


中学二年生――多感な年頃だ。



「家庭の問題なら周りが口出せることじゃないし、放っとけばそのうち落ち着くんじゃないの。」


「でも、もしもあの子が悪いグループとつるむようになったりして、警察に保護されるようなことになっても困るだろ?」


「別にあたしは困らないけど。」


結局のところ、レンもカオルちゃんに対しては過保護なのだ。



「しっかし、俺やルカのようになってもダメだしなぁ。」


「どういう意味よ!」


ペシッ、と叩くと、彼は笑う。

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