潮騒
裏切りの絆
雨の続く毎日だった。
街も人もどこか悲しげに映り、こんな場所でも情緒あるようにさえ見える。
久々に出勤したところで、居場所がなくなってしまったことに変わりはない。
ふらふらとおぼつかない足取りのままに店の外へと出た時、待ち構えていた車にひどく驚かされた。
真っ赤なマスタング――チェンさんだ。
「遅いから、入れ違いになっちゃったかと思ったよ。」
「…どうして?」
「あれれ、マサキから聞いてない?
心配だけど用事が残ってるから迎えに行けないってことで、俺が頼まれたの。」
迎えに来るなんて話は聞いていなかったし、メールも電話もなかったはずだ。
が、「送るよ。」と言った彼に促される形で、助手席へと乗り込んだ。
「よく知らないけど、何か大変らしいじゃん。」
車は発進し、彼は横目がちにあたしをうかがう。
「マサキも今の仕事辞めるかもとか言ってたし。」
「……え?」
「それも聞いてない?
まぁ、それぞれに転換期が来たってことなのかもしれないね。」
感慨深げにチェンさんは言った。
車内に流れる音楽は、彼には似つかわしくない古いシャンソン。
「人はいつまでも同じままではいられないし、例えば別れがあったとしても、それは仕方のないことだ。」
「………」
「他を犠牲にすることだって、時には必要なのかもしれないしね。」
街も人もどこか悲しげに映り、こんな場所でも情緒あるようにさえ見える。
久々に出勤したところで、居場所がなくなってしまったことに変わりはない。
ふらふらとおぼつかない足取りのままに店の外へと出た時、待ち構えていた車にひどく驚かされた。
真っ赤なマスタング――チェンさんだ。
「遅いから、入れ違いになっちゃったかと思ったよ。」
「…どうして?」
「あれれ、マサキから聞いてない?
心配だけど用事が残ってるから迎えに行けないってことで、俺が頼まれたの。」
迎えに来るなんて話は聞いていなかったし、メールも電話もなかったはずだ。
が、「送るよ。」と言った彼に促される形で、助手席へと乗り込んだ。
「よく知らないけど、何か大変らしいじゃん。」
車は発進し、彼は横目がちにあたしをうかがう。
「マサキも今の仕事辞めるかもとか言ってたし。」
「……え?」
「それも聞いてない?
まぁ、それぞれに転換期が来たってことなのかもしれないね。」
感慨深げにチェンさんは言った。
車内に流れる音楽は、彼には似つかわしくない古いシャンソン。
「人はいつまでも同じままではいられないし、例えば別れがあったとしても、それは仕方のないことだ。」
「………」
「他を犠牲にすることだって、時には必要なのかもしれないしね。」