潮騒
カオルちゃんはそう叫んだ刹那、荷物を持って立ち上がった。


どうしてあたしは止めてしまったのだろう。


気付けばその腕を制するように掴み、



「わかったから、落ち着きなさいよ!」


真剣な顔で言ったあたしに、彼女はびくりと肩を上げる。



「確かにあたしも言い過ぎたし、悪かったけど、うちから飛び出したなんてレンに知られたらまた何を言われるか。」


「………」


「大体、アンタも考えなしに行動してどうすんのよ。」


どこか自分自身と重なって見えるのは、半分だけとはいえ、血の繋がりがあるからだろうか。


少しだけお兄ちゃんに似ている、その意志の強そうな瞳。


この子を憎んでいるはずなのに、なのにあたしは、何故だか掴んだ手を放せなかった。



「放してよ、アンタはあたしのことが嫌いなんじゃないの!」


怪訝な顔をしたカオルちゃんに、あたしは、



「でも、人はひとりじゃ生きられないの。」


「…え?」


「ムカつくけどさ、アンタとあたしはきっと似てるんだよ。」


そう、あたし達は似てるんだ。


向かい合う腹違いの妹は、いつかのあたし。


彼女は何故か堰を切ったように、うわーん、とあたしの胸で泣き出した。

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