潮騒
カオルちゃんは少し目を丸くするが、



「家出した理由なんて色々とあるんだろうけどさ、帰る場所があることの幸せは、他の何にも代えられないよ。」


「………」


「あと、心配してくれるレンの存在も、ね。」


その時、ぐうっ、と鳴った彼女のお腹。


あたしは思わず噴き出した。



「何よ、お腹空いてたんなら早く言いなさいよ。」


「…なっ、そんなんじゃっ…」


「良いから、良いから。
美味しいもの作ってあげるから、待ってなさい。」


子供らしくも顔を真っ赤にさせたカオルちゃん。


それが可笑しくて、あたしは鼻歌混じりでキッチンへと向かう。


手早くパスタでも作ってやろうかと思案し、キッチンで背を向けていると、



「どうしてアンタは、こんなあたしに優しくすんの?」


振り向くと、不安そうな瞳がそこにはあった。



「あたし、アンタの“腹違いの妹”なんだよ。」


「で?」


「絶対許せない気持ちだってあるはずなのに、あたしの愚痴なんか聞いて、おまけにご飯の準備までして。」


やっぱりあたしは笑ってしまう。



「だってさぁ、何だかんだ言っても結局は妹なんだよ、アンタはあたしの。」

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