潮騒
「ルカにも随分と迷惑を掛けてしまったみたいだな。」


改めてあたしに向き直ったお父さんは、



「本当にすまなかったよ。
お前には、なんと詫びれば良いか…」


「別にそういうのはいらないから。」


遮るようにあたしは言った。


それでも彼は、



「もう一度言うけど、お父さん達と暮らさないか?」


「………」


「カオルと同じくらい、ルカもお父さんにとっては大事な娘なんだ。」


頷いたおばさん。



「ルカさんのこと、いつかは引き取りたいと思っていたの。」


改めてちゃんと見た彼女は、本当に普通のおばさんだった。


不倫するような女だからきっと、派手でいけ好かないようなタイプなのだと勝手に思い込んでいたけれど。


だからあたしは笑ってしまう。



「お気持ちだけで結構です。」


「…でもっ…」


「やっぱりあたしは今更、お父さんやその家族と一緒には暮らせないし、今まで築いてきた自分の生活もありますから。」


ふたりはぐっと押し黙った。


けれどその沈黙を破ったのは、カオルちゃんだった。



「ありがとう、お姉ちゃん。」

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