潮騒
お姉ちゃん?


今まで“アンタ”としか呼ばれなかったあたしは、我が耳を疑ってしまうが、



「一緒に暮らすことだけがすべてじゃない。
別々に暮らしてても、例え半分だけの血の繋がりでも、あたしにとってはお姉ちゃんだって改めて気付いたから。」


「………」


「だから、本当にありがとう。」


図らずも、嬉しくなってしまった自分がいた。


カオルちゃんは少し口を尖らせながらも、



「ねぇ、また泊まりに来ても良い?」


あたしは頷いた。



「良いよ、いつでもおいで。」


「うん。」


「まぁ、もう家出してきましたってのは勘弁だけど。」


荷物をまとめる彼女と、それに寄り添うお父さんとおばさん。


微笑ましいほどに、仲の良い家族。


頭を下げ、去っていく彼らに、気付けばあたしは、



「お父さん!」


呼び止めるように声を上げていた。



「大切にね、自分の家族を。」

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