潮騒
カオルちゃん達がいなくなった玄関で、嵐が去ったような顔で煙草を吹かすレン。


彼は思い出したように言った。



「自分家族を大切に、ねぇ。」


そしてクスリと笑い、



「ルカとカオルちゃん、絶対仲良くなれると思ってたよ、俺は。」


コイツめ、きっと計画的だったに違いない。


外せない用があるだなんて、とんだ嘘っぱちだ。



「随分な策士ね、アンタも。」


「まぁ、良いじゃん。
最終的には全部が良い形で丸く収まったんだからさぁ。」


「結果オーライだ、って?」


「ははっ、それそれ!」


嫌な男だ。


けれど、確かにレンのおかげなのかもしれない。


お父さん達を恨むことなく、過去と向き合えた気がするから。



「ありがとう、なんて言わないからね。」


睨むあたしと、口角を上げた彼。



「失ったものばかりじゃないって、ルカに気付いてほしかったから。」


言葉が出なくて、少しばかり泣きそうになった。


世界がきらきらとして見えたのは、一体誰のおかげだったろう。


そこにマサキはいなかった。

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