潮騒
翌日の昼、久しぶりに街へとやってきた。


レンからの電話で、飯でも食おうよ、と誘われたから。


昼間から焼肉屋を指定する彼の胃袋にはやはり驚かされるが。



「あれれ、ルカちん食わねぇの?」


彼はホルモンをつつきながら聞いてきた。



「あたしはアンタみたいに焼肉ラブじゃないからね。」


「ははっ、知ってるけど。」


「なら誘うなっつの。」


「良いじゃん、良いじゃん。
プータローなんだし暇してんだろ?」


「アンタの相手するほど暇ではないけどね。」


なのに、レンがそれを気にする様子はない。


あたしはため息混じりにメニュー表を眺めながら、サラダを探した。


肉の焼ける音に紛れて続く沈黙。


先にそれに耐えられなくなったのは、あたしの方だった。



「で、何かあった?」


これだけ長い付き合いだ、顔色ひとつでそれくらいはわかる。


鋭いねぇ、と呟いたレンは、少し困った様子で箸を置き、頬杖を突いてから、



「まぁ、大したことじゃないんだけどさ。」


赤黒くなっていく、網の上の肉の色。



「うちの両親、離婚するかもしれないんだってさぁ。」

< 302 / 409 >

この作品をシェア

pagetop