潮騒
どういう意味だろう。
刹那、チェンさんは胸元から取り出した黒い塊を、マサキへと投げる。
放物線のように弧を描いて彼の胸元に収まったそれは、いつかのトカレフだった。
「それで俺のこと、殺してくれない?」
「……え?」
「ルカちゃんに見守れながら、ここでマサキが殺してくれるなら、それだけで俺は天国って場所に行けそうな気がするから。」
本気で言っているのだろうか。
チェンさんは煙草の一本を取り出し、火をつけてから、感慨深げに煙を吐き出した。
「俺、本当はスミレさんに利用されてるだけだってことも、わかってた。」
「………」
「でも、それでも初めて心を許せた彼女になら、喜んで騙されてあげてたかった。
偽物だって、いつかは本物よりも大切になることだってあるんだから。」
なのに、と彼は宙を仰ぐ。
「なのにね、やっぱりダメだったよ。」
「………」
「スミレさんはある日突然、金持って逃げちゃうし、気付いた時には俺だけがあっちこっちから追われちゃっててさ。」
こういうの、八方塞りって言うんでしょ?
チェンさんは少し困ったように笑い、
「所詮はヨンハを殺して本物の忌み子になってしまった俺が、逃げのびた果てに、幸せなんて手に出来ると本気で思い上がった結果がこれなんだから。」
嫌になるね、と言いながら、
「だからもう、殺してくれない?」
刹那、チェンさんは胸元から取り出した黒い塊を、マサキへと投げる。
放物線のように弧を描いて彼の胸元に収まったそれは、いつかのトカレフだった。
「それで俺のこと、殺してくれない?」
「……え?」
「ルカちゃんに見守れながら、ここでマサキが殺してくれるなら、それだけで俺は天国って場所に行けそうな気がするから。」
本気で言っているのだろうか。
チェンさんは煙草の一本を取り出し、火をつけてから、感慨深げに煙を吐き出した。
「俺、本当はスミレさんに利用されてるだけだってことも、わかってた。」
「………」
「でも、それでも初めて心を許せた彼女になら、喜んで騙されてあげてたかった。
偽物だって、いつかは本物よりも大切になることだってあるんだから。」
なのに、と彼は宙を仰ぐ。
「なのにね、やっぱりダメだったよ。」
「………」
「スミレさんはある日突然、金持って逃げちゃうし、気付いた時には俺だけがあっちこっちから追われちゃっててさ。」
こういうの、八方塞りって言うんでしょ?
チェンさんは少し困ったように笑い、
「所詮はヨンハを殺して本物の忌み子になってしまった俺が、逃げのびた果てに、幸せなんて手に出来ると本気で思い上がった結果がこれなんだから。」
嫌になるね、と言いながら、
「だからもう、殺してくれない?」