潮騒
遠い記憶の向こうで、懐かしい声がした。


もう十分だよ、と。


今となってはそれが、お兄ちゃんだったのか、それともチェンさんだったのかはわからない。


ただあたしは、ひどく心地の良いそれに身を預けるようにして、意識を手放した。





「…マサキ。」







ねぇ、マサキ。



あたし達の道は一体
どこに向かっているんだろうね。



終わりが見えなくて

息苦しくて
生き苦しくて。



最初から幸せになれないと
わかっていながら選んだ道なのに。


どこか遠くに行けば
運命さえも変わっていたのかな。




ねぇ、ごめんね。











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