潮騒
スミレさんの消息なんてあたしには調べようがないけれど、でもきっと石橋組に関連した場所にいることだろう。


そしてそれを狙う、マサキ。


マサキはやっぱり今も何をしているか定かではないまま、帰ってきたり、こなかったりを繰り返していた。


本当はこんなことなんてしたいわけではない。


けど、でも、スミレさんが最後に吐き捨てた言葉が、今も鮮明に記憶に残っているから。


彼が消されるのなんて時間の問題だ、と言った、あの言葉が――。


あたしはマサキの部屋に来ていた。


今まで使ったことなんてなかったけれど、何かの時のためにと、一応は合鍵を預かっていたし、忍び込むことは容易かった。


当分帰ってないのだろう、少し埃がたまった棚。


どこに何があるかくらいはおおよその見当がつくため、あたしは目ぼしい引き出しをすべてチェックしていく。



「あ!」


と、そこで見つけたもの。


石橋組に関する新聞記事や週刊誌の記事が、びっしりとファイリングされていた。


おまけにここ最近の日付のものまである。


やっぱりスミレさんが言っていたことは間違っていなかったらしい。


彼が調べ上げ、狙っている人物――石橋重弘組長。


他にも何に使うのか、数台の携帯電話や明らかに偽造した免許証まである。


もう、ただの情報屋ではないのだろう。


あたしは見つけたものすべてを元通りに棚に戻し、部屋を後にした。

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