潮騒
マサキを止めなければならない。


復讐したい気持ちは痛いほどにわかるけれど、でも、殺されるかもしれないだなんて。


けれど、方法がなかった。


何よりあたし達の間に広がった溝は、今更どうにかなるのだろうか、と。


悶々としたままにシャワーを浴び、リビングに戻った時、



「…マサ、キ…」


帰っていたことに驚いた。


けれど彼は表情を変えないままに、座れよ、と促す。


とても良い空気ではなくて、だから無意識のうちに緊張が走った。


一体何を言われるのだろうかと思った瞬間、



「なぁ、ちょっと聞きてぇんだけど。」


その瞳は、ひどく冷たいもの。



「お前のこと疑ってるわけじゃねぇけどさ、今日何してた?」


「え…」


「まさかとは思うけど、渡した合鍵で余計なことなんてしてねぇよな?」


まるですべて見透かされているかのようで、返答すべき言葉も出ない。


マサキはそれを肯定と受け取ったのか、



「何考えてんの?」


「………」


「お前、いつからそういう女になったんだよ!」

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