潮騒
反論虚しく、ふたりによって店から強引に連れ出されたのは、それからすぐのこと。


まぁ、真っ直ぐ家に帰る気分ではないことだし、これはこれで良いのかもしれないけれど。



「とにかく今日はパーッと遊ぼうぜ!」


レンの言葉に笑ってしまった。


きっと美雪から全部聞いてるくせに、それを言葉にはせず、昔からそんな風にして遠回しに気を使ってくれるところは変わらない。


すっかり夜色に変わってしまった、車窓を流れる景色。


携帯の電源は切ってやった。


ふたりは前の席で、あぁでもない、こうでもない、といつも通りの盛り上がりを見せている。


あたしも彼らのように、体の関係もないまま続いていれば、こんな別れはなかったのだろうかと、ありえもしないことを思ってしまった。


何より所詮はお前らが幸せになれるわけなんてねぇんだ、と、過去にレンから言われた言葉が蘇る。


一体何が悪くて、あたし達は上手くいなかったのだろうか、と。


ふと、オーディオから流れるうるさすぎる洋楽パンクのボリュームを落としたレンは、



「あれだよな、それも運命みたいなさ。」


わけのわからない一言をぽつりと呟く。



「世の中には、出会うべくして出会ったけど、別れるべくして別れた、みたいなことって案外多いもんなんだし。」


「………」


「っていうことを歌ってるんだけどな、この曲は。」


フォローのように付け加えられた言葉に、また笑った。


遠ざかる街並みを窓に映しながら、車は国道をひた走る。

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