潮騒
街から海まで行くには、かなりの距離を要する。
だからいくら夜だから道が空いているとはいえ、まだまだ時間が掛かりそうだ。
街外れに差し掛かりながら走る車内、美雪はふと、道端の標識を指差して、
「ここ、あたしの地元なんです。」
振り向いた彼女はそう言った。
運転席にいるレンは、少し複雑そうな顔をする。
この街の一番大きな病院に宮城くんが入院していることは、あたしも聞いて知っているけれど。
「少し北部の方に行くと、この時期はホタルなんかもいたりして、すごく綺麗なんですよ。」
「………」
「なのに、ホタルって2週間しか生きられないんですよね。」
悲しいでしょ、と呟く彼女。
どう返せば良かったのだろう。
ただ、この空気に似つかわしくないパンクの音が、嫌に耳障りでしかない。
レンが、吸っていた煙草を灰皿になじると、ジュッ、という音がする。
宮城くんの顔が脳裏をよぎった、その瞬間、
「あ、携帯が鳴ってるー。」
美雪のそれは、まるでホタルのような光を点滅させながら、マナー音を震わせていた。
そして彼女はディスプレイを確認し、首をかしげながらも、
「はい、はい、……え?」
急に固くなった声色に、何事なのかと思ってしまう。
彼女は戸惑うような顔をして、
「…お兄ちゃん、が?」
だからいくら夜だから道が空いているとはいえ、まだまだ時間が掛かりそうだ。
街外れに差し掛かりながら走る車内、美雪はふと、道端の標識を指差して、
「ここ、あたしの地元なんです。」
振り向いた彼女はそう言った。
運転席にいるレンは、少し複雑そうな顔をする。
この街の一番大きな病院に宮城くんが入院していることは、あたしも聞いて知っているけれど。
「少し北部の方に行くと、この時期はホタルなんかもいたりして、すごく綺麗なんですよ。」
「………」
「なのに、ホタルって2週間しか生きられないんですよね。」
悲しいでしょ、と呟く彼女。
どう返せば良かったのだろう。
ただ、この空気に似つかわしくないパンクの音が、嫌に耳障りでしかない。
レンが、吸っていた煙草を灰皿になじると、ジュッ、という音がする。
宮城くんの顔が脳裏をよぎった、その瞬間、
「あ、携帯が鳴ってるー。」
美雪のそれは、まるでホタルのような光を点滅させながら、マナー音を震わせていた。
そして彼女はディスプレイを確認し、首をかしげながらも、
「はい、はい、……え?」
急に固くなった声色に、何事なのかと思ってしまう。
彼女は戸惑うような顔をして、
「…お兄ちゃん、が?」