潮騒
レンの仕事が終わるのを待って、ふたりで一緒にラーメン屋にやってきた。


一応名の知れたあたし達なのに、こんなしけた店の常連だというのは、少し笑える話だけれど。



「やーっぱ酒飲んだ後のラーメンは格別だよな。」


レンはスープをすすりながら感嘆するように頬を緩めた。


あれだけ飲んでおいて大盛りを頼めるこの男の胃袋には、いつも感心させられる。



「ルカと飯食ってんのが一番楽っつーか、俺こういう方が性に合ってるし。」


「同感。」


するとレンは、さすがは遺伝子が同じだけあるな、と、わけのわからない納得をしていた。


あたしは腹を抱えてしまう。


そこでふと真面目な顔をした彼は、



「ちょっとは元気出たか?」


「……え?」


「お前は隠してるつもりかもしれねぇけど、いつからの付き合いだと思ってんだよ。
それくらいわかるっつーの。」


湯気を立てるラーメンと、レンの言葉が、心に沁みる。


けれど顔を俯かせることしか出来ずにいると、



「ルカはさぁ、俺とは違って逃げたって良いんだ。
無理しておばさんのために金を用意し続ける理由なんか、ホントはねぇだろ?」


「………」


「第一、ユズルくんが死んだのはお前が悪いわけじゃなくて、運転手の所為だろ。
シャブ喰って車乗った結果、歩道に突っ込んで来たのは向こうだ。」


今だったら、危険運転致死傷罪というものが適用されていたのかもしれないけれど。


でもあの当時、そんなご立派な法律なんて存在しなかった。



「ユズルくんは妹のこと守っただけなんだから、もういい加減、お前が責任感じる必要ねぇよ。」

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