潮騒
ヨウさんは煙草の箱からその一本を摘み上げ、指でトントンともてあそぶ。
怒鳴り散らすよりずっと、静かに睨み上げるその瞳の方が怖い。
「わざわざ居場所まで調べて、てめぇのためにこんなとこまで来てくれた女に、そういう態度はねぇだろう?」
「………」
「どういう関係なのかは知らねぇけど、てめぇが後生大事そうに持ってるあれ、同じもんがその子のバッグから覗いてたからな。」
お守りのことだ。
途端にマサキはバツが悪そうな顔になるが、それでもヨウさんは、
「この世に未練たらったらのくせに、偉そうに死のうとしやがってよ、だからてめぇはガキだって何度も言ってんだ。」
「………」
「ひとりでも自分のために泣いてくれるヤツがいるうちは、人は死ぬべきじゃねぇんだから。」
マサキは唇を噛み締め、掴んでいたあたしの腕を離す。
手首の痛みから解放されて、やっと、会えたことが現実なんだと気付かされた。
それでも彼は、あたしの方を見ようとしない。
ヨウさんはそんなマサキの態度に、
「面倒くせぇガキだなぁ、おい。」
と、イラついたように息を吐き、
「その子とちゃんと話せよ。」
「………」
「てめぇのくだらねぇ意地の所為で誰が一番傷つくのか、考えたことねぇだろう?」
吐き捨てるようにそう言った。
怒鳴り散らすよりずっと、静かに睨み上げるその瞳の方が怖い。
「わざわざ居場所まで調べて、てめぇのためにこんなとこまで来てくれた女に、そういう態度はねぇだろう?」
「………」
「どういう関係なのかは知らねぇけど、てめぇが後生大事そうに持ってるあれ、同じもんがその子のバッグから覗いてたからな。」
お守りのことだ。
途端にマサキはバツが悪そうな顔になるが、それでもヨウさんは、
「この世に未練たらったらのくせに、偉そうに死のうとしやがってよ、だからてめぇはガキだって何度も言ってんだ。」
「………」
「ひとりでも自分のために泣いてくれるヤツがいるうちは、人は死ぬべきじゃねぇんだから。」
マサキは唇を噛み締め、掴んでいたあたしの腕を離す。
手首の痛みから解放されて、やっと、会えたことが現実なんだと気付かされた。
それでも彼は、あたしの方を見ようとしない。
ヨウさんはそんなマサキの態度に、
「面倒くせぇガキだなぁ、おい。」
と、イラついたように息を吐き、
「その子とちゃんと話せよ。」
「………」
「てめぇのくだらねぇ意地の所為で誰が一番傷つくのか、考えたことねぇだろう?」
吐き捨てるようにそう言った。